【黄河源流S#056】青海省の無人地帯でラーメンをすする

2011年08月22日 青海省 /

テントを張る時は、なるべく窓を東向きにして張るようにしている。
理由は、朝日を見たいからという、ごく単純な理由だ。テントも乾きやすいしね。

目論見通り、岩山から上る朝日を浴びて目が覚める。
昨夜はテントの窓を開けたまま熟睡してしまった。

標高3,100mは、今までの標高に比べたら大した事はないし
その上、何よりも砂のベッドが心地良かった。

おっ!風も今日は吹いていないぞ!?
行けるかな?風が吹き出す前に出発しよう。

今日は3,700mまの峠を越え、140kmを走る予定だ。
遮るもののない場所。全ては風次第・・・だ。

ラクダって正面からだとよく分らん動物だ
横から見るとラクダらしく見える

ゆるゆるの坂を上りだす。
ありがたい事にこんなに車が少ないのに、新たに道路建設中。
今ある道路に並行した新しい道を作っているのである。

新品のアスファルトが何百キロも続いている。
勿論車は走ってはいけないが自転車は問題ない。・・・ハズ。

岩山の合間をすり抜けるように道が続く

黙々と3,700mを目指して上る。
あと少しで頂上だ!という時、突然呼び止められた。

「ご飯食べた?」って。  笑

一人の少年が手にお椀を持って立っている。
お椀の中にはいわゆる地元麺がよそられていた。

余りに唐突だったので、
つい「うん」と答え、彼について道路脇に踏みいると
そこには道路工事のテントがあり、
数人の工事人がしゃがんでお昼ご飯を食べていたのだ。

彼は「食べなよ!」と言ってテントに入り僕を手招きする。
言われるがままにテントに入り、言われるがままにお椀に麺を入れてもらった。

工事の人たちもニコニコ。
みんなで一緒に砂漠に座り込み、ラーメンをすすった。

この道路は「軍事用」の名目で建設されているが、
実際には「職人確保」の為の工事。

つまりこの道路を作る限り、
彼らの”職”が保障されると言う事だ。

日本でも年末になると道路工事をしていたのを思い出す。
それにしてもスケールが大きい。

ゴルムドから敦煌までの500km。
砂漠地帯に土台を作ってアスファルトを敷いて・・・・を3年がかりで作るらしい。
彼らは自分たちが作った道を”君たちのように”自転車で快適に走ってくれると嬉しいんだ!と話してくれた。

・・・「君たち?」って?

そこで気がついたのだが、僕を呼びとめた彼は、なんと旅チャリダーだったのだ!
テントの脇に彼の自転車が停めてあった。結構な荷物だ。

さぁてどっち向きに走っているんだ?
敦煌方向か・・・ゴルムド方向か・・・。

彼は僕と同じ敦煌方面に行くようだ!
彼は半年かけて中国を一周するという兵(ツワモノ)。23歳!若い!

内モンゴル出身の「劉クン」

ご飯を食べ終わり、旅は道連れと言う事で二人で旅を続けることとなった。

23歳かぁ・・・。負けられねぇな(笑)

ま、自分のペースで行くだけのことだ。
と、思いつつもやはりペダルに力が入る。

向かい風の中懸命に漕ぐ劉クン!時速5km!^^

峠の下りは負けない自信がある!
なぜなら荷物が重いから(笑) 重力の法則ですね。
あっという間に彼が見えなくなった。

やがて平坦路になり、向かい風も強まってきて
かなりペースダウンするが、それでも彼の姿が見えない。

なにか事故でもあったのかと彼を待つこと30分。
超ーーーーースローペースな彼が、陽炎の中から現れた!

あれぇ・・・のんびりクンだったのですね。
それはそれで良い。お互いのペースで走りましょう。 

下り坂は楽勝♪

夕方に無人区のはずの道路脇に小さな村が現れた。
殆どが廃墟となっているが、僅かに生活している人がいる村だ。

その村の人の為と、この無人区を通るドライバーの為の
小さなレストランがあるではないか!そこで後から来る彼を待って、一緒に夕食を食べる。

その村の廃れ具合が、西部劇に出てくる片田舎のようで、結構絵になっていた。

中国版、西部劇のレストラン

ついでに水を補給して、走りだす。
(因みに500mlのペットボトルを8本持つようにしている=2日分の最低限の水)

二人で走るとやる気も出てくるから距離も稼げる。
暗くなるまで走りつづけて予定よりもかなり距離を伸ばすことができた。

なんと、この一か月以上苦しんだ高原地帯最後の峠を越えたのだ!
標高3,650mを暗闇の中走ってテントサイトを見つけた。

真っ暗やみの中、お互いにテントを張り終えた、まさにその瞬間!
ものすごい突風と共に大粒の雨が降り出した。

余りの変化に慌ててテントに逃げ込むが、テント生活10年以上になるがこれ程の強風は初めてだ。
テントの中で飛ばされないように踏ん張っていたのだが、
5分もしないうちにテントごと吹き飛ばされてしまった(笑)

文字通り「パウダーサンド」と「大粒の雨」が混じって粘土になった地面で、もう一度テントを張り直す。
あらゆるものが砂まみれで泥まみれ。小さなランタンだけが頼りだ。

隣のテントでも劉クンがテントと格闘している。
今度は飛ばされないように自転車の荷物を全部テントの中に放り込んで、ようやく一段落。

テントの中は砂まみれ。体は泥まみれ。
うわぁ・・・最悪なテント生活だ。

外は風はだいぶ収まったが、ひどい雨だ。明日どうなるんだろ?

それでもテントの中は相変わらず砂風呂効果で暖かいのが幸い。

それにしても良く走った一日だ。
ここまで来れば、明日敦煌に確実に着ける。

・・・・天気次第だが・・・・と考えている内に砂風呂の中で眠りについた。

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