【黄河源流S#041】中国の大草原で恐怖の夜から一夜明けての高級ホテル
2011年07月20日 青海省 /
「葉格」という村は、直線で200mほどの小さな村。
そこには人も牛も羊も犬も一緒に生活しており、村に沿って川が流れている。
昨夜は食後に川原にテントを張ったのだが・・・!
結論から書くと「一睡も出来ない夜」だったのだ。それはなぜか?こう言う事だ。
何度も書いているが、この地域にはオオカミさんがたくさんいらっしゃる訳で、
そのオオカミさんから牛や羊を守るために、犬がいるわけですね。
因みにその犬。超が付く大型犬。
元々僕は大型犬を飼っており(体重50kg)、大型犬に対しての恐怖心は全くない。
この数日間も放牧地域で何度となくその大型犬に追い立てられてきているが、
無視していれば彼らは諦めるし、彼らには彼らの領域があるので、
ある所まで追いかけるとイソイソと戻っていくのである。
また犬はご主人様に対しての服従は絶対なので、
飼い主の友人と分ると吠えるのを止めてくれるのが常だった。
・・・・・えぇこれまではね。笑。
昨晩もテントを張らせてもらう前に、一番近くの家の人に挨拶をして、
犬にも仁義を切って(?)おいた。
こうしておくとむやみに吠えてこないし、オオカミが来たとしても身内として守ってくれる訳である。
予定通り、そこの家の人の前でテントを張り、犬もそれを黙って見学していたのだ
・・・・が!
家の人が家に入るや否や、僕のテントに向かってすさまじい勢いで吠え始めたのだ。
そして、近所の犬仲間も呼び寄せて合計10頭位にテントをグルリと囲まれ、
ひと晩中(本当に一晩中)吠えつづけられた。
「吠えていただけでしょ?」と思うなかれ。
75kgはある巨体でテントに体当たりまでされたのである。
テントなんて所詮ビニール一枚で出来ているので、吠えられているだけと言っても、
ビニール越し20cmの所で、猪並の大型犬に吠えつづけられて普通ではいられない。
しかも犬でも吠えつづければ声がかれる。
すると違う犬がそれをサポートすると言った具合。
とにかくテントの中で、ヘルメットをかぶり、スタンガンを持ち、
カメラの三脚を握りしめて寝袋に入っていた。
5秒の間隔を空けずに吠えつづけられること9時間は、
文字通り生きた心地のしないほどの恐怖だった。
結局一睡もしないまま朝を迎えた。
不思議な事に6:00ぴったりに吠えるのも止んだ。
彼らの仕事はオオカミから身内を守ること。
オオカミは夜行性だから、日が昇れば彼らの仕事は終わりなのである。
・・・合理的じゃ。
ようやく犬が去ったようなので、テントをチィーと開けて
トイレに出てみたら、再び囲まれてしまった。
でも、ひたすら無視。
明るくなっているので恐怖心も和らいでいた。
昔飼っていた犬を思い出して、ちょっとイタズラをしてみたくなった。
吠える犬ほど大した事はないのだからと思って、
僕に向かって吠えつづけているに向かって大声で同じように吠え、一歩大きくふみこんでやった。
一瞬でも怯めば面白いと思ったのだが・・・・。
次の瞬間、本気で飛びかかってきた(汗)
避けるのが精いっぱい!
同時に他の犬も距離を縮めてくるではないか!
僕も本気で逃げてテントに飛び込んだが、その後何度もテントに体当たりされ、
今まで以上に吠えたてられてしまう羽目になった。
ただ、運良く飼い主が起きて出てきてくれたおかげで、
それにて終了となったが、それにしても・・・・・。
これほど犬に対して恐怖を感じた事は初めての経験だった。
その後、飼い主の家に招かれて朝ごはんを頂き、
テントを撤収して昨日会った方の家に向かう。
蘇州に持って帰る荷物は別にして、自転車を彼の友人の家の倉庫に入れて、ゴルムドに向けて出発!
400kmのドライブだ。
またここに戻ってきて走る道を、今回見学できる訳なので、地図を持ちメモをしながら走った。
「こりゃぁ・・・無理だ」
まず250㎞は相変わらずの未舗装路。
その後150㎞はひたすら下るのだが。。。
最初の250㎞区間は、道路工事中でとんでもない状態。
物理的には通れるけれど、100m進むのにゆうに30分はかかるだろうというひどさ。
下りの150㎞区間はグランドキャニオン並の砂漠地帯。
おまけに400㎞の区間中、売店は3か所。レストランなし、宿なし。
更に付け加えると、今回は彼に出会えたお陰で村からゴルムドまで車で移動できたが、
今度戻ってくる時には交通手段はない。バスも無ければタクシーも行ってくれない。
(日本円で5万円くらい払っても行ってくれない場所)
唯一の方法は、道路工事のダンプをヒッチハイクで乗り継ぐという方法のみ。
ビザを取って戻ってくるのには、相当苦労しそうだ。
結局、7時間かけて山を下ってきた。
景色は素晴しかったが、次に来た時の事を考えると写真を撮る余裕はなかった。
で、道中に蘇州に戻る為の航空券の手配を秘書にやってもらっていたのだが、
「満席でチケットが買えません」との連絡が入った。
「そんなはずないだろ?」と思ったのだが、ゴルムドについてなるほど、と思った。
ホテルも満室なのだ!送ってくれた彼らとは市内に着いて直ぐに別れ、
その後タクシーに乗り換え、安宿を廻ってもらったのだが、何件行っても「満室」と。
徐々に高い旅館を探し始めるがそれでも満室。
ついにはゴルムドで一番高いホテル(因みに12件目)に行きつき、
そこでもうギブアップ!なぁんと一泊560元!
インターナショナル5つ星ホテルで、フロントでは英語も通じる!
プールもサウナも・・・。日本ならば一泊5万は下らないクラス。
航空券は明後日のチケットが取れたので、このホテルに2泊する事になった。
思いがけないこの事態は、詰まる所この地域の最高の観光シーズンに加え、
チベット族のお祭り(道中見てきた練習風景)があり、
全国からチベタリアン(?)などが観光を兼ねて戻ってきていたからだったのだ。
いずれにしても、チェックイン!
もう完全に場違いな格好をしている飯高(4,500mから降りてきているし、1週間一度も着替えていないし、冬服だし)は、
散々ジロジロと見られる羽目に。 そんな事を気にしない訳ではないが、
とにかくシャワーを浴びたい!服を洗いたい!
部屋に入るや否やまたまた服ごとシャワーに入って、体も服も一緒洗ってしまった!
足元には泥水が流れ落ちていた。
昨晩は番犬に襲われ、朝は川の水で顔を洗っていた自分が、
今や超高級ホテルの一室にいる不思議さに思わず笑ってしまった。
そう言えば鏡と言うのを見ていなかったな。・・・と、
改めて鏡を覗き込んでがく然とした。
・・・・これ俺の体か?と思うほどに痩せているのだ。
大袈裟ではなく、ミゾオチ部分はえぐれる様に窪み、
あばら骨は見事に全部ハッキリと見えてしまっている。
自分で見ても気味が悪いほど痩せているのだ。
足元に置いてあったヘルスメーターに恐る恐る乗ってみた。
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「48kg」
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うー・・・・・そでしょ? ホントです。
通常時で57kgの飯高の体重は、この1週間で9kgも落ちていたのだ!
道中辛かったのは、低酸素のせいだけでは無かったようだ。
これはイカン!健康を損ねたら旅は続けられない!
シャワーを浴び、唯一1枚のTシャツを着て、
すぐさま一階のレストランに駆け込んだ。
200元(約3000日本円)のバイキングだが、そんな事どうでも良い。
とにかく肉・・・肉!目の前に並んだ食材を片っぱしから更に取り、
表向きには物静かに、内心ではかぶりつく勢いで食べまくる。
骨付きマトン5本。
手のひらサイズのハンバーグステーキを3つ。
北京ダック5つに、中華野菜炒めに、イタリアンサラダ。
お刺身てんこもりにチャーハンとラーメンと饅頭。
あ、トマトとチーズも。食べ終わってからケーキ3つにアイス4玉をコーヒーと一緒に食べたのだった。
その直後から睡魔に襲われ、フッカフカののベッドで横になった途端、記憶を無くして爆睡した。
※画像少なくてごめんなさい。